『木の香(かおり)と薬効』
山や神社に行って森や杉林の中に入ると
何ともいえず
すがすがしい気分になりませんか?
さわやかな空気のにおいを感じませんか?
それは本能で感じているのです。
呼吸はもとより体全部の気孔で感じ、
気道の働きがよくなるからです。
日常の経済活動で汚れた街の空気から解放され
森や杉林のすがすがしい空気を吸い
汚れた空気を吐き出して
さわやかな空気のにおいで
心が安らぎ、活力を取り戻した気持ちになるのは
単に精神的な気分なのではありません
森林の樹木から放出される精油分によるものなのです。
このような精油分は樹木の葉に最も多く含まれていますが
樹木にも含まれています。
単位重量あたりの含有量は葉の1/10で少ないですが
木造住宅に使用される木材の体積を考えると
そうとうな量になります。
新築の木造住宅でプンと薫るあの独特な木の香りがそれです。
ヒバやヒノキ材は腐りにくく、昔から精油成分も明らかにされ
香料、殺菌・殺虫剤などがつくられてきました。
精油分はどの樹木でも単一の化学成分ではなく、
多くの成分が複合化されたもので、薬効も多様で
薬効のすべてが解明されていません。
これから新たな薬効が解明されるのも楽しみです。
今回はこれで終わります。
★☆★☆★☆★☆★☆ 追伸 ★☆★☆★☆★☆★☆
フィトンチッドと云う言葉を知っていますか?
フィトン(Phyto)= 植物
チッド(cide)= 他の生物を殺す能力を有すること
で、植物は他の生物を殺す能力を有することを意味します。
100年以上も前から
森林の樹木から放出される何らかの化学物質であると考えられていましたが
これを明確にし、その物質にフィトンチッドと命名したのは
レニングラード大学(ロシア)のボリス・P・トーキン教授(1930年)です。
教授は、マツ、モミ、ポプラ、カシなどの葉やニンニクなどを細かく刻み、
数cm離れたところにアメーバや赤痢、腸チフスなどの病原菌を置くと、
これらの微生物や病原菌が短時間内に死んでしまう、
早ければ数秒で死滅することを見出しました。
そして、これをフィトンチッド命名したのです。
これは植物体から発散される揮発性物質(化学物質)の働きであり、
殺菌、殺虫、昆虫の誘引や他の植物に対し成長阻害作用などを持つもので
それを総称してフィトンチッドという呼名なのです。
通常は樹木の葉にある気孔から極微量のフィトンチッドが
空気中へ放出され、あのさわやかな匂いになっているのです。
葉を傷つけたりすると放出量が急増します。
樹木の自己防衛機能が働くのでしょう。